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2005/04/09

secretaria

さて、私は今、ひょんなことから「秘書」におさまってるのです。友人(高校の同級生)の紹介でした。彼女から「この分野でトップクラスっていうかトップの先生だから」と聞いてはいます………が、こういう感じです↓↓↓


数ヶ月前、「面接」という形で一度先生に会ったとき、友人は友人で久しぶりに先生に会いたいわということでついてきてくれました。面接といっても大学構内のレストランでお食事をご馳走になりながら3人で楽しくおしゃべりしたという感じの和やかな面談でした。

理系の先生です。友人もまた私の友人の中では数少ない理系の子です。「ですが私は理系はサッパリですよ? 私はホントに理系のことは中学3年くらいで停まったまんま(!) なんですよ? よろしいんですか?」と私はくどくどと念を押しました。先生は、「あぁ、レネヤマさんは僕の研究のことなんて全くわかってなくていいんです」と。


私の高校は一応進学校(?)ということで、受験に臨む姿勢は現実的で「無駄」を省いているべきなのですが、全っっ然そうではなくて、たとえば理系の生徒でも高3の時点で日本史が必修だったり、文系の私でも高3の時点で化学が必修だったりと、「無駄」な科目が多すぎた。

文系の俺らにとって、高3での化学の授業なんて時間が惜しくてとてもじゃないが聞いていられないわけです。‘要らない’んだから。邪魔でしかない。my高校では内職についてはウルサク言われないのだけが救いでした。学校側も生徒の内職を見咎めないことにしていたように思います。暗黙の了解というか。だから、化学の授業中は文系の我々はひたすら内職という日々でした。

しかし、定期テストはどうしても受けなきゃいけないし、5段階の1がついちゃったら非常にマズいのです。致命傷なんです。内職は見逃してもらっても通知表では見逃してはもらえません。そこでクラスの文系の人間で『化学同盟』を結成しました。登録メンバーは12人でした。

授業を聞くのを順番制(当番制)にしたのです。当番の人だけが必死にノートをとるの。その他のメンバーは安心して内職に励みます。当番だけが先生の言うことを一字一句メモる。「……略…… で、これを鹸化と言います。ケンカって言ってもグーで殴ったりする喧嘩じゃありませんからねー」などという、お爺さん先生のくだらないダジャレまでがメモってある、そういう完璧なノートです。

そうやって出来上がった完璧なノートを定期テスト前に全員分コピーして、みんなは一夜漬けで詰め込みました。しかし、一番大事な授業の日が字の汚ねぇメンバーに当たったりしてると悲惨でした。読み取れねぇ。それでそこの項目を諦めて試験に臨んだら見事にそこが出題されてたりしてメンバー全滅だったりしました。(というか、そもそも12回に1回しか授業を聞いてないんだから、いくらノートが完璧だからって理解できるわけがないのさ)

しかし、そうやってかろうじてみんな「1」だけは免れてました。「2」で逃げ延びたと思う。


「……っていうくらい、理科っぽいことはわかってない私ですけどよろしいんですね?」と確認しましたが(←そこまでぶっちゃけたんかい)、教授は「かまいません」と言ってました。


面接を終えた時点では私はまだYESと答える決心がついてませんでした。別れ際に先生が封筒をくれようとします。「なんか、交通費をね、さしあげることに決まってるみたいなんですよ」と言います。「そんな、先生、けっこうです、お食事までご馳走になってそのうえ交通費までなんていただけませんよ」と固くお断りしました。私もまだ心が決まってなかったから、交通費なんてもらっちゃったら申し訳なくて断りたくなっても断るという選択肢が無くなってしまうと思ったのです。断るためにはニュートラルでいたかったので、交通費を固辞したのです。

が、先生は「いやぁ、受け取ってもらわないと僕も困っちゃうよ」と言います。しばらく押し問答。それで最終的には私は、「わかりました、先生、ホントに今日はけっこうです、私が働くことに決まったらその時に払ってください」と申し出ました。先生は「そ、そう……?」と言いつつまだ封筒を引っ込めてくれないので、ついには私は、

「言いますから、ちゃんと私、その時には言いますから。『先生、あの時の交通費ちょーだい』ってゆーから!

と言って封筒を奪うと先生の胸ポケットに押し込んでようやく黙らせた、もとい黙っていただいたのでした。


………という話を西村さんにしたところ、笑いつつもヒいており。「そこには全然敬語が無ぇな!」と。「敬語なんてどっか逝っちゃってるよね、『ちょーだい』とか『ゆーから』とか、ヒドすぎだよね」と。


そんなこんなで始まった秘書生活。まだ仕事らしい仕事はしてません。

実際に先生の研究室に入ってみてわかったのですが、この先生、すごく「雑然さん」だった。トラベラーズチェックを紛失した私と同じタイプの「雑然さん」でした。あー、落ち着く♥

でっかい机の上は書類の山。ベテランの秘書さんも私も、その書類の山には決して触ってはいけないのだそうです。「ここは聖域ですからね。絶対に動かさないでくださいよ。僕には何がどこにあるかがわかってるんです。でも、他人に動かされちゃうと僕わかんなくなっちゃうんです」。あー、わかるわかる♥

しかし、いくらなんでもゴチャゴチャすぎる。

私が処理に取り掛かっていた書類も、ちょっと先生としゃべってる間にすぐにどっかに持ってっちゃってどこかの山に紛れ込ませちゃうので、「えっと、先生、さっきの書類はどちらへ……?」「へ? 無い?」「先生が……」「どっかに挟んじゃったのかなぁ」「先生がさっきあっちの部屋に持っていかれたようですよ」「あ、そう?」「たぶん」「あぁ、あったあった」……っていうやりとりが幾度と無く生じる。


こ、これでは私でもさすがに不安である。やっぱり、この大机の上を整頓してしまいたい衝動に駆られる。先生のためではなくて私の安心のために。

「先生……あのぅ……やっぱり、私は、この大机の上は整頓してはいけ……」「いけませんよ! レネヤマさんが整頓しちゃいけませんからね!」「じゃぁ、私ができることと言ったら…」「そうそう、僕を時々叱ってくれればいいの」「あ。わかりました。時々先生に、えっと、『整頓しろ……』じゃなくて『整頓しなよ……』じゃなくて『整頓すれば?』じゃなくて…『整頓してください』ってお願いすることだけなんですね」

「いま、レネヤマさん、『整頓しろ』って言わなかった?」「いえ、言ってません」「言いかけたよね」「言いそうでしたけど言ってません」


などというやりとりを、ベテランの秘書さんがヒヤヒヤしながら見てました。


そんな大机の書類の山を脇に寄せて獲得した小さいスペースで書類を書き上げる私。机の面が硬くて書きにくい。先生としゃべりながら、床に乱雑に積み上げられた科学雑誌を抜き取って下敷に使おうとした。すると先生が、「なっ、何してんの!」と。

「え? 下敷…」「ダメだよ。この雑誌は下敷にしちゃダメ」「 これ大事な雑誌なんですか?」「大事だよ。僕の論文が載ってるんだから」「だって、床に落っこちてたから…」「落っこちてるんじゃなくて置いてあるの

先生は、「下敷欲しいの? しょーがないなー」と言いつつ、机の書類の山の中から大封筒を一つ抜き出して私にくれた。「じゃ、これでも使ってて」と。


なので私はその‘下敷’を今後ずーっと私の仕事スペースにしようと思って、うっすらとデカデカと鉛筆で図のように「したじき」と記しました。
shitajiki

そして先生に、「この『したじき』って書いてある封筒の上に置いてある書類はぜんぶ私が処理する書類ですから、先生、いじらないでくださいよ。他の書類をこの上に乗っけたりしちゃだめですよ」といいました。そしたら、また先生がギョッとして、

「なっ、なんで『したじき』とか書いちゃってんのよ、油断も隙も無いな。それも大事な書類なの、僕、これからその中身を見るんだから」「もう要らないのをくれたのかと思って」「さっきは、臨時で渡したの。あの時だけー!」「もー。臨時じゃないヤツくださいよー」「こっちをあげるよ、こっち。こっちは『したじき』でも『れねやま』でもなんでも書いていーからー」「最初っからそれをくださいよ」

……ベテランの秘書さんはもう涙を拭いながら傍らで笑い苦しんでた。

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コメント

「秘書ライフどうよ?」という質問が友人から来ましたので、ちょっと書いときます:

理系の学生さん・研究者のことは私はまだよくわかっていません。男の子がやっぱり圧倒的に多いから戸惑っているというのもあるね。理系の学生(特に男子)の扱いが、正直まだマスターできてないです、私。

いや、なに。あの年頃の男友達も居ないわけではありませんが、私の周囲はみんな文系ですし、特に外国風なふるまいに慣れ切っていたり、更に音楽サークル経由の後輩だったりするものですから、やはりみな往々にして‘硬くない’(っていうか、よくも悪くも‘粗野’‘猥雑’だったりする)わけで。……へ、偏見…?

理系の学生さん(特に男子)は、あまりイジってはいけないのではないかと思うので、私も日々緊張して、清楚にとりすまして(←つもり)静かにやってます。なるべく無駄口たたかないようにしています。

で、先日。
帰り際にバタバタ歩いてたら、男子学生の靴を思い切り踏んづけ、さらに60cmくらい蹴飛ばしてしまったんです。その靴の本人は私の真後ろにいて、まさにそれを履こうとしていたというバッドタイミングでした。

「あら、ごめんなさいね」などと精一杯上品に謝ったつもりです。

すると、もう一人の男子学生が、「いいんですよ、コイツの靴なんていくらでも蹴っ飛ばしてかまわないんっすよ、もう、どんどん踏んづけちゃってくださいよ」とフォロー(?)の言葉をかけてくれた。

それで上品に微笑んで「ごきげんよう」っつって立ち去りゃぁいいものを、私、やっぱり下品じゃん? ついつい、いつもの(自分の後輩男子に接するような)口調で、

じゃぁ、今度はピンヒールで♥ がははは!」

と言い残して去ってしまった。ヤバいって。ほんと、この職場ではこういう軽口を封じようって心に決めてたのに。こういうこと言わせないで。

投稿: Reine | 2005/04/13 10:49

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